かつて“遊べる本屋”として若者に圧倒的な支持を集めたヴィレッジヴァンガード。
個性的なポップや独自の世界観で人気を博しましたが、近年は大量閉店が報じられ、かつての勢いを失いつつあります。
この事例は、OEMビジネスを行う私たちにも他人事ではありません。
なぜなら、「個性を失うことの怖さ」は、どんなブランドにも共通する課題だからです。
本記事では、ヴィレヴァンの衰退から学べる“個性喪失のリスク”と、OEMでそれを防ぐ方法を解説します。
ビレッジヴァンガードの衰退が教える「個性喪失のリスク」
かつて「遊べる本屋」として存在感を放っていたヴィレッジヴァンガード。
しかし、2025年には全店舗の3割を閉店するほどの危機に直面しました。
その背景には、かつての強みだった“個性”を自ら手放したことがあります。
OEMビジネスでも同じように、誰にでもウケる商品を目指すと、“誰にも刺さらない商品”になってしまうのです。
ここでは、ヴィレヴァンがたどった失敗の構造を具体的に見ていきます。
ヴィレヴァンが失った「あなたから買う理由」
ブランドの本質は「あなたから買いたい」と思わせる理由にあります。
ヴィレヴァンは以前、店員の手書きPOPや店ごとの陳列に“人の温度”があり、ファンを魅了していました。
しかし、イオンなどの大型商業施設への出店により、個性が薄れ始めたのです。
その結果、ファンが離れ、一般客も飽きて離脱。
OEMにおいても「他と同じ」デザインや訴求を繰り返せば、差別化が失われ、価格競争に巻き込まれていきます。
ターゲット拡大がもたらす「個性の希薄化」
顧客層を広げようとするほど、商品は平均化されます。
ヴィレヴァンはコアなファンを持つサブカル文化の象徴でしたが、商業施設へ進出したことで“どこにでもある店”へと変化しました。
濃いファンが離れ、ライト層も飽きる。
OEMでも、「誰にでも合う商品」を狙うと、熱量の高い顧客を失うのは同じです。
万人受けを狙うことが、実は最も危険な戦略なのです。
「誰でも買える」は「誰も買わない」と同義
「あなたから買いたい理由」がない商品は、他社と比べられて終わります。
ヴィレヴァンは“どこにでもある”店になったことで、「ここで買う意味」を失いました。
OEMでも、個性や世界観を持たない商品は“ただの物”にしか見えません。
顧客がブランドに共感するのは、機能ではなく“物語”です。
ブランドの価値は、他人との違いを言語化し続ける努力で守られます。
数字に見る衰退と「在庫リスク」の教訓
ヴィレッジヴァンガードは2013年に438億円あった売上が、2025年には249億円へと半減。
さらに2期連続の最終赤字を計上しました。
背景には、売れ残りによる大量の在庫と、その評価損(特損)がありました。
OEMでも、売れる根拠のない商品を量産すれば同じ道をたどります。
短期のヒットではなく、長期的に売れ続ける仕組みを構築することが重要です。
在庫の「評価損」はブランドの致命傷
在庫を抱えたまま売れない状態が続くと、その資産価値はどんどん下がります。
ヴィレヴァンは60億円規模の在庫を持ち、その半分を評価損として処理する事態に陥りました。
OEMでも在庫を“資産”としてではなく“リスク”として見る視点が大切です。
売上よりもキャッシュフローを重視し、在庫回転率を管理することで、ブランドの健全性を守ることができます。
OEMの構造的強みを活かす
OEMの強みは、原価率を設計できる自由度にあります。
自社で商品を作るため、仕入れ依存型のようなリスクを避け、利益率をコントロールできます。
ヴィレヴァンのように仕入れ主体のビジネスは、値下げで即ダメージを受けました。
一方、OEMなら“自分で価値を生み出せる”構造を持っています。
個性と構造、この2つを両立させることが成功の鍵です。
OEMビジネスで「個性」を失わないための実践ポイント
OEMは自由度が高い分、方向を誤ると一瞬で「その他大勢」に埋もれます。
ヴィレッジヴァンガードの事例は、個性を守るブランド戦略の重要性を教えてくれます。
ここでは、OEMで個性を保ち、長く愛されるブランドを築くための実践的なポイントを3つに分けて解説します。
模倣ではなく「世界観づくり」に投資する
OEMの失敗で最も多いのが「売れている商品ページを真似る」ことです。
確かに短期的には成果が出ますが、それは“他人の土俵”で戦っているにすぎません。
ヴィレヴァンのように、店員の手書きPOPや独自の品揃えがブランド価値を高めたように、共感される世界観をつくることが長期的なブランドの差を生みます。
コンセプトを明確に言語化する
「誰のどんな悩みを解決する商品なのか?」を明確に言語化することで、ブランドの方向性が定まります。
ヴィレヴァンの“遊べる本屋”というコンセプトが印象的だったように、存在意義を一言で語れるブランドは強いです。
曖昧な目的で作られた商品は、市場に埋もれる運命にあります。
言語化こそが、ブランド設計の第一歩です。
表現の統一で“ブランドらしさ”を育てる
パッケージ、商品画像、コピー、トーンなど、すべてに統一感を持たせることでブランドの信頼感が生まれます。
OEMではトンマナ設計を軽視すると、安っぽく見えたり他社と区別できなくなります。
ヴィレヴァンのPOP文化のように、「一貫した表現」がブランドの魂です。
視覚・言葉・世界観の統一が“あなたから買いたい理由”を作ります。
時代に合わせて“個性の形”をアップデートする
サブカルとメインカルチャーの境界が曖昧になった今、過去の成功パターンに固執するのは危険です。
OEMビジネスでも、「昔はこれで売れた」は通用しません。
市場は常に変化しており、自社の個性も“時代に合わせて進化させる力”が求められます。
データ分析で「今の市場ニーズ」を捉える
ヴィレヴァンは時代の変化を正確に読み取れなかったことで、ファンとのズレが生まれました。
OEMでは、Amazonレビューや検索トレンドなどのデータを活用し、今求められている価値を可視化することが重要です。
感覚ではなく、数字と行動データを根拠にした商品開発こそが、個性の継続につながります。
「個性」と「普遍性」のバランスを取る
個性が強すぎても、特定の層にしか刺さらない。
逆に薄めすぎると埋もれる。ヴィレヴァンは一般層を狙いすぎた結果、どちらにも届かなくなりました。
OEMブランドは、コアターゲットの心を掴みつつ、普遍的なデザインや機能で広く支持を得るバランスが必要です。
個性を時代に合わせて“調律”する姿勢が、長期的なブランド成長を支えます。
まとめ
このブログでは、ヴィレッジヴァンガードの衰退を通して「個性を失うことのリスク」と「OEMでそれを防ぐ方法」を解説してきました。
ヴィレヴァンは、“誰にでも刺さる”を狙った結果、“誰にも刺さらない”存在になってしまいました。
OEMでも同じように、ターゲットを広げすぎると本来の魅力を失います。
これからの時代に必要なのは、「あなたから買いたい理由」を生み続けるブランド構築。
模倣ではなく、自社の世界観を育て、時代に合わせて個性を進化させることが、真のブランド力を生むのです。
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